鳴り響け、復活のソナタ
「初対面なのに・・
イッセイは私のこと全部見透かしてた。
死んだ魚の目って言われた・・。」
「“変な奴”って思ってたけど、
でも震災の時、人知れず被災地へ物資を届けた“実は良い奴”って思ってたけど、
・・・正体は“嫌な奴”だったんだね。」
「ううん・・。違うのお父さん。
確かにすごく嫌な気持ちになったけど・・。
でもイッセイは、
私が空っぽだって気付いてたくせに、
ゴリさんに名刺を渡させたの。」
「・・・・・・・・・・・。」
「アイドルなんて絶対にやりたくない。
人前になんて絶対に出たくない。
私は春から時給800円の女として生きていく。
それが正しい選択だって、
ずっと考えてた・・・・・。」
「・・・・・・東京に・・・
行ってみたいと思ったんだね?」
「・・・スッ・・スッ・・・。」
「日本中の人気者。
でも一部の巷では“鬼才”と忌み恐れられてるあの男の元へ行けば、
もしかしたら、
“空っぽ”の自分が、
“空っぽじゃなくなるかもしれない”
って考えたんだね・・?」
「・・・ウゥゥ・・スッ・・ヒック・・。」
「このまま何もしないで、
空っぽのまま生きるぐらいだったら、
何かを変えてみたいと・・決めたんだね?」
「・・・うん・・・。」
「凄いじゃないかキョウコ。」
「・・え・・?」
「お母さんが亡くなったあの日から・・
ピアノを辞めたあの日から・・
“一歩”、前に進めたじゃないか?」
「・・・・・・・・・・・・。」
「反対はしない。
応援以外の何物でもない。
それが例え怪しい世界でも、
危なそうな世界でも、
“前に歩きたい”とお願いする娘を止める父親がどこにいる?」
「・・・・スッ・・スッ・・。」
「“やっぱり戻りたい”と思ったらいつでも電話しなさい。すぐに迎えに行くから。
例えイッセイに900万人の味方がいたとしても、娘を想う父親は強いぞぉ?」
「・・ウゥゥ・・ありがとう・・
・・・お父さん・・。」