鳴り響け、復活のソナタ
捕まえたタクシーに飛び乗り、
運転手へ行き先を告げる。
目的地に辿り着くと、
鍵はかかっていなかった。
扉を開けた瞬間、
微かに鼓膜を捕らえるその音。
第2スタジオに近づく度に、
はっきりと聞こえるその音。
“ガチャリ”
「・・!?・・・・・・。」
防音加工に守られた外から、
その音の正体に足を踏み入れた瞬間、
全身に鳥肌が立った。
俺が来た事にも気付かない様子で、
右手と左手を・・
まるで川の流れのように動かす後ろ姿。
イスに座っているのに、心の底から“躍っている”かのように錯覚する後ろ姿。
「・・・・キョウコ・・・・。」
びっしょりと濡れた服。額に光る汗。
汗だくのその横顔は“微笑み”という言葉がよく似合う・・穏やかな表情を浮かべていた。
《♪!!!!》
「・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・。」
ちょうど曲が終わったらしく、
ゆっくりと鍵盤から手を離した視線が、
ようやく俺の姿を認識する。