セジョウ
「重い方が好きってね」
どこかで風が泣いた気がした。
不思議だなと思う。
おそらく上月くんが付き合ってきた子は
今後注がれるであろう愛情を、軽率な覚悟で受け入れると示したのだろう。
受け入れるどころか自身の狭量な器に
注ぎ込んでほしいと…。
そして安堵した上月くんはもちろん
大量の愛を注ぐ。
容易に溢れる。当たり前だ。
そして溢れた途端、それを「重い」と
斬り捨てる。
上月くんが注いだ一つ一つの愛情は
見返されることもなく、たった一言で
括られてしまうのだ。
恐ろしいほど人を愛することができる
上月くんが異常なのか。
軽率な気持ちで愛されたいと言う子たちが
悪いのか。
そんなの分からない。