セジョウ
「上月くん……」
わたしはゆっくりうなずいて、上月くんを
抱きしめた。
上月くんは「最後」と言っていた。
その時の彼の瞳はとても濁っていて
奥深い闇が広がっているようだった。
もしわたしがここで上月くんを突き放したら
どこかへ消えちゃうような気がして…。
これが同情なのか好意なのかなんて
今は関係ない。
とにかく、上月くんに消えてほしくなかった。
「上月くん…」
「ありがとう…
受け入れてくれてありがとう大沢さん」
「どこにもいかないでね」
わたしの言葉に
上月くんはぴくりと反応した。
「…うん。どこにもいかないよ。
大沢さんが逃げなければね…」
儚い声は、夜空にとけていった。