プリンセスストロベリーの憂鬱
老舗和菓子屋をいずれは継がなくてはいけないというのに、同じ菓子なのに、対岸にあるものになりたいという孫娘を忌ま忌ましいと思う祖父もいてもおかしくはないだろう。

だとしたら、夏恵が祖父の家にいられない理由も分かる。

「すみません。初対面の方にこんなことを」

「構いませんよ。それでも彼女のケーキを見る目は輝いていました。

ほんの少しでも、幸せな時間を過ごして頂ければ、我々も嬉しいかぎりです」


彼の言葉に救われた気がした。

オレじゃなく夏恵が。
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