プリンセスストロベリーの憂鬱
記憶の中の佇まいとさほど変わりない店の姿に安堵した。

「すみません。鷹司夏恵は来ていませんか?」

店の中に入って声をかけた。

中も余り変わっていないみたいだ。

夜は、少しだけ明かりを落として落ち着いた感じの雰囲気になり、仕事帰りのOLや、デートで食事した後で一息ついている恋人たちがいた。

こういう雰囲気は嫌いじゃない。


「鷹司さんは今日は来ていませんが。どちら様ですか?」


対応してくれたのは、背の高いウェイター姿の黒髪の男だった。

すぐに思い出した。

あの時もこういう風に話しかけてくれた。


「鷹司夏恵の担任の朝霧と申します。10年前、夏恵と一緒に一度ここ来たことがあるんです」

「あぁ、覚えてますよ。立派になられましたね」


覚えてくれていたことは純粋に嬉しかった。


「夏恵がどうかしましたか?」


奥から銀髪の店長が出てきた。

店長まで記憶の通り、二人とも10年も経ってるのに年を取っているように見えない。



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