哭かない君と

「ひゃっ！！」


小さな悲鳴とドンッという音がして、板の間が少し揺れた。


調度そこで食事を取っていた男達は当然音のした入り口付近を振り向く。


途端にざわつく広間。


「なんだお前！？」


そこには赤い着物に身を包んだ、一人の少女の姿があった。


慌てふためく男達。


だが周りとは対照に、その中の一人の男は、「何か見たことある光景だな」とぼんやりとそれを見ていた。


訝しげな視線が刺さる中、少女は瞳を輝かせた。


その片方の目には眼帯がされている。


突き刺さる視線を受け流しながら、少女は左目だけで男達を見渡した。


そして一人の、あのぼんやりとしていた男に目を止めた。


少女は更に瞳を輝かせると、その男に近付き手をとった。


そして────


「貴方が沖田総司さんね？また、逢いに来ました。」


そう言って笑った。