幻惑
「肝心なのは、そこじゃないだろう。結婚している人と、付き合っていることだろう。どういうつもりなんだ、結花里。」

父は、落ち着いた声で静かに言う。
 

「彼は、今 離婚協議中なの。」

私も、少し落ち着いて言う。
 
「不倫している男は、みんなそう言うんだよ。」

父は、憐れむような眼を私に向ける。
 

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