幻惑
駅から、そう離れていない新居まで。車を走らせて。
 
「俺の荷物は、さっき下したよ。結花里の半分もないけど。」

と笑う翼に、頷く私。
 
「部屋、綺麗になっていて。驚いたよ。結花里、本当にありがとう。」

昼間、最後の家具を受け取って、今夜から暮らせるように 私は部屋を整えておいた。
 
「ううん。本当は今夜、ご馳走作りたかったんだけど。」

と私が答えると
 
「今夜のご馳走は、結花里。」

と翼は微笑んで言う。
 


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