幻惑
「郵便で送ろうか。」

翼はそう言って、私に微笑みかける。
 
「大事な書類なのに。大丈夫?」

私は、それも不安だと思った。
 
もし翼が、離婚届を渡しに行くのなら、その場で奥さんに、記入してもらいたい。

そうすれば、もう連絡を取る必要もなくなる。
 
「書留は?それなら、ちゃんと届くでしょう。」

と翼は、考えた顔で言う。
 
「でも。家にいないと受け取れないよ。」

書留は、手渡しだから。

確実だけれど。不在が多いと、いつまでも受け取れない。
 
「そうか。あっ、美容室に送るよ。あいつが働いている。そうすれば、誰かいるから。必ず、受け取れるでしょう。」

翼は、表情を明るくして言った。
 
「うん。」私も頷いたけれど。

不安は消えなかった。

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