幻惑
聡美が、初めて新居を訪れたのは、その翌日だった。

昼間の時間は自由になる私。

家を出た後も何度か、聡美と外で会っていたけれど。

部屋に入って聡美は、
 
「結花里、少し痩せた?」と聞く。
 
「ううん。そんな事ないと思うけど。」

と私は聡美を見る。
 
「なんか、先月会った時と 結花里、雰囲気が違うから。」

聡美は心配そうな顔をする。
 
「奥様っぽくなったかな?」

聡美の鋭い視線が怖くて、私は茶化してしまう。
 
「増渕さんと、上手くいってないの?」

聡美は、直球で聞いてくる。
 
「上手くいっているわ。翼君、すごく優しいし。私にメロメロだもん。」

と言う私を、聡美はじっと見つめて、
 
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