幻惑
「ごめん、結花里。離婚届、受け取ったっていう電話だから。」

私を気遣う翼に、私は微笑んで首を振る。
 
「うん。大丈夫。気にしてないよ。」


本当はすごく頭にきていたけれど。

どうして電話を掛けてきたのか。

受け取った連絡なら、ラインで十分なのに。
 
普通に話していた翼のことも、信じられなかった。

本気で別れるつもりなら、用件だけ聞いて、電話を切るべきだと思った。
 
「早く書くように言ったからね。」


私の顔を覗き込み、機嫌を取るような翼。

私は笑顔で頷いて
 
「うん。ありがとう。」と答えた。
 
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