幻惑
私のいない所で、電話されるよりはいい。

外に出た翼が、何をしていても 私はわからないのだから。

私の前で話すことで、疚しい気持ちがないとわかるから。
 
でも本当は、そんな電話聞きたくない。

こだわり過ぎていると わかっていても。

嫌な気持ちは消えない。
 
「私、お風呂入ってくるね。」

私の顔色を窺がう翼に、我慢できなくて。

私はコーヒーを飲み干すと、立ち上がった。
 
 
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