幻惑
「結花里。家に帰ろう。」

と言った。首を振る私の目から、涙が飛ぶ。

「もう、増渕さんに任せておけないよ。結花里、これ以上、今の生活を続けていたら、おかしくなっちゃうよ。」

聡美の言葉に、私は両親の顔を思い浮かべていた。
 
「駄目。パパは許してくれないわ。」

家を出る時父は、何があっても助けないと言った。

私は、そんな父に啖呵を切って、家を出たのだから。
 


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