幻惑
私が荷造りをしている間に、聡美は母に電話をしていた。
 
「ママ、すごく心配していたよ。すぐに連れて来てって。」

聡美の言葉に、私はまた涙を流す。
 
「今頃、ママがパパに連絡してくれているから。結花里は心配しなくても、大丈夫よ。」

そう言う聡美に頷いて、部屋に鍵を掛ける。

不思議と私は、翼のことを考えなかった。
 


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