幻惑
あれほど私を叱り、突き放した父は、何も言わずに温かく、私を迎えてくれた。

家に戻った日、ベッドで微睡む私の側にきて
 
「結花里、大丈夫か?」

と私の頭を撫でていた父。

それから毎日、父は私の部屋に入って、私の様子を見ていた。
 

「パパ。ごめんね。」

ぼんやりした意識のまま、私が言うと
 
「今は、ゆっくり休みなさい。」

と言って、父はしばらく私の枕元にいた。



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