幻惑
一週間経って、私はようやく、父とゆっくり話した。
 
「パパ。本当にごめんなさい。あんなに、大きなこと言って、家を出たのに。」

私が戻ってから、早く帰宅する父。

夕食後、リビングで向かい合い、私は父に謝罪する。
 
「結花里の強情には、驚いたよ。一か月くらいで音を上げると思ったのに。」

と父は、優しい目で笑った。
 
「パパに似たのよ。」

と私の横で微笑む母。

まるで家を出る前と、変わらない風景。
 


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