幻惑
何故 もっと早くに、そうしてくれなかったのか、という思いも溢れた。
 
「パパが力になれることはないか、弁護士が必要なら、紹介するって言ったよ。」
 
「パパ、いいの?私が、翼君と一緒にいても。」

私は驚いて父を見る。
 
「パパは、結花里の幸せが一番だから。結花里は、こんなに増渕君のことが好きなんだから。引き裂けないだろう。」

と苦笑する父。

医師と結婚させて、病院を手伝わせたいと思っていたはずなのに。
 
「ごめんね。パパ。ありがとう。」

私の目から、涙が溢れる。
 

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