幻惑
「先に上がるから。ゆっくり再会を味わってくれ。」

と言って、父はリビングに入っていく。
 
「結花里。ごめんね。会いたかったよ。」

そっと私の耳元で、翼が囁く。
 
「つ、ば…」

私は泣き声のまま、翼の名前さえも呼べない。
 


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