幻惑
「前の妻は、だらしない性格で。俺と離婚することは承諾していたんだけど。役所や銀行の手続きとか、免許証の名前の変更とか。そういうことが面倒だからって、離婚届を書かなかったんだ。」

翼から、初めて聞く話し。

私は黙って、続きを促す。
 
「入籍した時も、そういう手続きは、全部俺がやったから。でも、離婚した後まで、俺には頼れないだろう。だから、離婚届を書くことを渋っていたんだ。」

翼が私に話す事を、父と母は 黙って聞いていた。
 


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