幻惑
「今日は、翼君に 髪を切ってもらうつもりだったのよ。」

と口を尖らせると
 
「ここで切ってもらいなさい。家の準備が揃うまで、翼君もここに居ればいいだろう。」

と父が言う。
 
「あのマンション、方位が悪いのよ。もう行かない方がいいわ。」

と母も父に合わせる。
 
「ひどいなあ。二人で、一生懸命 見つけた部屋なのに。」

そう言って私は、翼の顔を見る。翼は苦笑して
 

「俺、責任重大だな。仕事、頑張らないといけないね。」

と答えた。不思議そうに翼を見る私に、
 
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