幻惑
私が居ない間、翼も寂しかったことを、私は実感する。
 

「ねえ、翼君。私のどこが好き?」

朝なのに、甘えて聞いてしまう私。

抱き寄せて、熱く唇を重ねたとき
 

『早くしなさーい。』と下から、母の呼ぶ声がする。
 
「続きは夜ね。」

と言って、私を離した翼。

甘い不満で、口を尖らせて。

私達は階段を下りて行った。
 
 

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