幻惑
26
母に連れられて見た家は、中古だけど築浅の大きな家。
 
「こんな豪邸。」

と言って、翼は絶句する。
 
「結花里、お掃除 頑張らないとね。」

と笑う母に、私が頷くと
 
「パパ、本当は、新しく建てたかったの。でも二人は待ちきれないだろうって言って。ここは場所も良いし。急な転勤で手放すことになった家だから。条件も良かったの。」

と母は、この家を買った経緯を 簡単に説明してくれた。
 
「私の知らない間に、全部 決めちゃうんだもん。」

と私が、少し膨れた顔をすると
 
「フフフ。パパは、結花里の驚いて喜ぶ顔が見たかったのよ。」

と母は笑う。
 
「俺。感謝しきれないよ。」

とポツリと言う翼に、
 
「親孝行してね。」

と母は笑った。
 


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