幻惑
「お袋は、俺が高校を卒業した時に再婚して、今は幸せに暮らしているから。俺は、そのタイミングで 一人暮らしを始めたんだ。お袋には、もう何年も会ってないなあ。」
そう言って翼は苦笑した。
「俺、家族とか家庭とか、知らなくて。父親の記憶もないから。誰かを頼るとか、助けてもらうとか。そういうことが、わからなかったんだ。」
翼の言葉を聞きながら、私は今まで 翼の何を見ていたのだろうと思った。
翼の胸にある傷や寂しさに、私は 全く気付かなかったのだから。
そう言って翼は苦笑した。
「俺、家族とか家庭とか、知らなくて。父親の記憶もないから。誰かを頼るとか、助けてもらうとか。そういうことが、わからなかったんだ。」
翼の言葉を聞きながら、私は今まで 翼の何を見ていたのだろうと思った。
翼の胸にある傷や寂しさに、私は 全く気付かなかったのだから。