幻惑
「結花里を傷つけて、苦しめてしまったことを俺が謝ると、お義父さんは これからどうするつもりだって俺に聞いたんだ。」


少しずつ、言葉を切りながら 翼は話し続ける。
 

「俺、そこで頭が真っ白になっちゃって。元妻を、どうすればいいか 全然考えてなかったから。俺がどうにかできていれば、結花里を苦しめないで済んだことだし。」


そう言って翼は、私を見つめた。

頷く私に、少し照れた目をして
 

「俺、お義父さんに『助けて下さい』って言っていたんだ。」

と言って、恥ずかしそうに微笑んだ。

私は、胸が熱くなって
 

「翼君。」と言ったまま、言葉に詰まる。
 

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