幻惑
「俺、自分の言葉に驚いたけど。お義父さんも、驚いていたよ。それまで、怖い顔をしていたのに。少し優しい顔になって。詳しく話してみなさいって言ってくれたんだ。」


翼の必死な思いが、私は嬉しかった。


そしてその思いを、受け止めてくれた父にも、感謝の気持ちでいっぱいになった。
 

「俺、お義父さんに助けてもらって、はじめて挽回できることを学んだよ。お義父さんの、結花里に対する愛情とか、家族の意味とか。少しだけど、わかったと思う。」


そう言って翼は、私を抱き寄せた。
 

「翼君。」ただ名前しか呼べない私。
 

「俺、結花里と家族を作りたい。お義父さんに負けないくらい、家族を愛したい。」


翼の声は震えていた。
 

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