幻惑
翼はおしゃれだけれど、決して派手ではない。

短髪で切れ長な目元の男っぽい顔立ち。

翼の顔をじっと見て、私は少し頬を染める。
 
「そう?これでも俺、結婚しているんだ。結花里ちゃんには、ちゃんと話しておかないと。」

翼はまた、意外なことをいって私を驚かす。
 
「へえ。そうなの。」

と平静を装いながら、私は腹を立てていた。

結婚しているなら、何故 私を誘ったのか。

何故 毎日電話してくるのか。

思わせぶりなことを言って。

少しでも期待していた自分にも、腹が立っていた。


 
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