幻惑
11時過ぎ。私達は店を出た。

二人でいた時間は、妙に甘くて。翼の話しは楽しくて。

時々、思わせぶりなことを言って、私を喜ばせる。

2杯のカクテルが、私の理性を麻痺させていた。
 
「ごめんね。結花里ちゃん、明日、仕事なのに。」

送るという翼を断って、私達は駅前のタクシー乗場まで歩く。

車で通勤している翼は、運転代行を呼んで帰ると言った。
 
「ううん。大丈夫。楽しかったし。」

心地よい酔いで、ゆっくり歩きながら。
 


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