幻惑
翼は、髪を洗いながら、私の耳たぶを摘まむ。

抑えきれない衝動に、私の体はピクッと震える。
 
「いや、森田さんは素直ですよ。」

と言って翼は優しい目をする。

私が責める目を翼に向けると、翼は優しく頷いた。
 
「頭皮が疲れていると、髪に栄養が届かないんです。だから時々、こうして頭皮をマッサージしてあげると、髪に艶が戻るんです。」

翼の指は、適確にツボを押す。
 
「気持ち良いですね。肩凝りも楽になりそう。」

私は翼の指で、リラックスしていく。
 
「肩、凝りますか?」

「はい。結構凝ります。」

私が答えると、翼は蒸しタオルを持ってきて、私の首の後ろに当ててくれた。

あまりの心地よさに、私は小さく息を吐く。
 
「こうすると、血行が良くなるから。楽になりますよ。」

私は、甘い瞳で翼を見つめる。
 
「はい。すごく気持ちいいです。」

やっとそれだけ言って。私の体は、全身で翼を求めていた。



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