幻惑
八時前、いつも待ち合わせをするコンビニで、翼は私を拾う。

車に乗った途端に、私は自分から、翼の胸に抱き付いた。
 
「どうしたの、結花里。」

私を抱き締めて、翼は言う。
 
「だって。翼君が意地悪するから。」

私は潤んだ目で翼を見上げる。

少し私を抱き締めた後、翼はそっと車を走らせる。
 
人通りのない路地に入ると、翼は急に車を停めた。

そして私を抱き寄せると、激しくキスをする。
 
「結花里。好きだ。結花里。」

重ねた唇の隙間から漏れる翼の声に、私は目くるめくような歓びを覚える。
 
「翼君。好き。離さないで。」

甘い吐息で答える私を、翼は強く抱きしめる。
 


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