幻惑

「結花里。可愛いよ。」

翼はそう言って、何度も私にキスをする。

私の体を、甘い欲望が駆け巡る。

初めての感触に戸惑い、私はどうしていいかわからない。

荒い呼吸で、翼の胸にしがみ付き、私は涙を流す。
　
「どうしたの、結花里。泣かないで。」

翼は私から唇を離すと、私を胸に抱き寄せる。
　
「だって。どうしていいか、わからない。翼君が好きで。好きなの。」

私は泣きながら、譫言みたいに繰り返す。
　
「結花里。俺も。俺も結花里が好きだよ。俺だって、どうしようもないくらい、好きだよ。」

翼も、熱に浮かれたように言い、何度も私にキスをした。
　
好きだと思いながら、二カ月近く我慢した体は、触れ合っただけで、妖しいまでの感触を呼び起こす。