白雪姫に極甘な毒リンゴを 短編集
あ~。もう。
今、十環先輩と
話したい気分じゃないのに!
「もしもし」
眠さマックスで
地を這うくらい低い声しか
出てこなかった。
どうせ十環先輩に
好かれてなんかいないと思うと、
不愛想な口調のままでしか
十環先輩と話せない。
「桃ちゃん、え……と」
「起きたんですね」
「俺をTODOMEKIから背負って
家に寝かせてくれたって聞いて。
本当にごめんね。
大変だったでしょ?」
「別に」
「桃ちゃん、今はどこ?」
「TODOMEKI」
「あ、自転車を取りに?」
「なんなんですか。ここは。
自転車を取りに行っただけで
『どこの族か言え!』ってキレられるし。
十環先輩の彼女だって名乗れば
みんなから『結愛ちゃん』って
間違われるし」
「そうだったの?
大丈夫だった?」
「ハムハムが出てきてくれたので」
「そっか。
俺さ、桃ちゃんに
話したいことがあるんだけど
今度はいつなら会えそう?」
「会う必要なんて
なくないですか?」
「え?」
「話したいことがあるなら
今電話で言ってください」
「それは……
やっぱりきちんと
桃ちゃんの顔を見て話したいし」
「そうですか。
私は今ここで伝えます。
十環先輩にどうしても言いたいこと」
「……なに?」