白雪姫に極甘な毒リンゴを 短編集
十環の想い
十環先輩は顔をゆがめたまま
ゆっくりと歩き
私を一瞬でも見ることなく
私の横を通り過ぎた。
無視かぁ。
さすがに辛いな。
でも、しょうがないよね。
『もう私の前に、姿見せんな!』なんて
怒鳴ったのは、私だから。
嫌われないはずがないもん。
ソファに座ったまま
ガクンと首を垂らした時
いきなり後ろから
温かい何かに包まれた。
ゆっくりと横を向くと、
すぐ隣に十環先輩の顔が。
何この状態?
さすがの私も
心臓がバクバクなんだけど。
私を包み込む腕の力が
強くなったと感じた時
十環先輩が凛とした声を発した。