白雪姫に極甘な毒リンゴを 短編集
「なんで清香さんは
私の顔を知っていたんですか?」
「私ね、虎ちゃんと同級生で
同じ中学なの。小学校は違うけどね。
桃華ちゃんは私より2歳下だけど
みんなから『姉さん』って
呼ばれていたでしょ?
カッコいいなって思っていたから」
虎兄の彼女さん。
私の黒歴史を
知っている人だったんだ……。
「桃華ちゃん、ちょっとごめんね」
清香さんはそういうと
ランドセルを背負いながら
列になって歩いてきた
小学生たちのところに駆けて行った。
「みんな、おはよう」
「清香ちゃん、おはよ」
「げ、清香。
今日も旗振りしてるのかよ」
「隆くん。そんなこと言って。
私に会えるのが毎朝嬉しいくせに」
「は?清香?
キモイこと言ってんじゃねえよ」
「アハハ。
私ね、みんなが小学校に行く日は
毎日旗振りするって決めてるの。
今日が終業式でしょ。寂しくなるな。
明日から、当分
みんなの顔が見られなくなるから」
「結衣も寂しいよ。
清香ちゃんに会えなくなるの」
「私もだよ、清香ちゃん。」
「みんなありがとう。
春休みが終わったら
また旗振りするからね。
はい、今なら車が来ていないから。
渡っちゃって」
「清香ちゃん、行ってきま~す」
「みんな、行ってらっしゃ~い」
そう言って清香さんは
子供たちが見えなくなるまで、
元気に手を振り続けた。