白雪姫に極甘な毒リンゴを 短編集
「1つ良いですか?
虎兄って、無愛想ですよね?
いつも睨んでるし
ニコニコ笑うタイプでもないし。
口数も少ないし。
どこがいいんですか?」
「え~と……。
優しいところかな?」
「優しい?」
「私、いっつも
虎ちゃんに怒られてばっかりで……」
さっき
虎兄が優しいって言ったよね?
「私ね、すっごくおっちょこちょいで。
電車の中にバックを
置き忘れちゃったり。
虎ちゃんとの待ち合わせの時間を
勘違いして
虎ちゃんを待たせちゃったりとか
よくあるんだ。
そのたびに『しっかりしろよ』って
怒られるんだけど。
その後はいっつも
優しく頭を撫でてくれて」
虎兄に怒られるんだよね?
それって、優しいのか?
「それにね
私ってしゃべりだしたら止まらないの。
虎ちゃんは無表情で最後まで
聞いていてくれるんだけど。
最後にホロっと笑って
『良かったな』とか
言ってくれたりするんだ。
虎ちゃんに怒られてばっかりだし
あんまり笑ってくれないし
本当に私のことが好きなのかなって
心配になっちゃうけど。
私が虎ちゃんのこと大好きだから。
離れたくなくて」