白雪姫に極甘な毒リンゴを 短編集
へ~。
虎兄。
清香さんに愛されてるじゃん。
虎兄の見た目とか
元番長って肩書だけで
寄ってくる女の子はたくさんいるけど。
清香さんは虎兄を理解して
好きになってくれたんだね。
「清香さん。
虎兄に変な服とか……
着せられてないですよね?」
「え……それは……」
清香さんの顔が
一瞬でリンゴみたいに赤くなった。
これは絶対に着せられている。
虎兄が好きなコスプレ。
絶対にさせられている。
きっと清香さんは虎兄が好きすぎて
コスプレなんて嫌って言えないんだ。
「私が虎兄に言ってあげましょうか?
清香さんにそんなの着せるなって」
「あっ。え……違うの……
私が……
好きで着ているから……」
「え?」
「着るのは正直言うと恥ずかしいけど……
でも……着ると言ってくれるから……
その……
かわいいって……」
清香さん
照れるとこんなかわいい表情するんだ。
そりゃ虎兄も
キュンキュンくるよね。
それにしても虎兄
すっごくいい人が彼女になってくれて
良かったんじゃん。
他に絶対にいないよ。
目つきが悪くて
不愛想で口下手なところも
好きでいてくれて。
コスプレに付き合ってくれる
女の子なんて。
「桃華ちゃん、ごめんね。
私、そろそろバイトに行かなきゃ」
「こちらこそ
急に話しかけてすいません」
「桃華ちゃん、またね」
黄色い旗をクルクル丸め
私にとびきりの笑顔を見せると
清香さんは駆けて行った。