白雪姫に極甘な毒リンゴを 短編集

 あんなに心が綺麗な人って、
 世の中にいるんだなぁ。


 清香さんの背中を眺めながら
 そんなことを思っていた時。


「桃、どうだった?
 すっげー仲良くなってたじゃん」


 スキップでもしそうなくらい
 ウキウキ気分の龍兄が
 私のところにやってきた。


 はっ!!!


 ……すっかり忘れていた!!


 私、龍兄の恋を応援するために
 清香さんに声をかけたんだった!!


 どうしよう。

 清香さんは虎兄の彼女で
 虎兄のことが好きすぎで。

 龍兄は諦めたほうがいいよなんて
 言えないよ。


 だって龍兄。
 絶対に傷つくもん。


 私の足にしがみついて
 号泣すること間違いなしだもん。


 なんとかして
 龍兄の心の傷を最小限にする言葉を
 かけてあげなくちゃ。


 そう思うのに。
 良い言葉が全く思いつかない。

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