白雪姫に極甘な毒リンゴを 短編集

 私は「お邪魔します」と伝え
 一人で先に玄関を上がった。


 そして振り返り
 龍兄にぼそりとつぶやいた。


「龍兄は……
 一緒に……来てくれないの?」



 龍兄……

 困っている。


 うつむいたまま
 立ち尽くしている。


 でもきっと
 私のためにリビングまで
 ついて来てくれる。

 そう思ったのに……


「あとは、桃が一人で頑張れ!
 じゃあな」


 なんですと!!


 この状況で帰るとか
 ありえないんだけど!!


 どうしていいかわからず
 諦めモードの私と十環先輩のお母さん。


 龍兄が玄関のドアに手をかけた時
 階段から降りてきた小百合さんが
 私たちに声をかけた。
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