白雪姫に極甘な毒リンゴを 短編集
この状況を十環先輩に
説明してもらいたくて
急いでスマホを耳に当てた。
「十環先輩?」
「あ、桃ちゃん。もう大丈夫だよ」
「大丈夫って。
龍兄になんて言ったんですか?」
「え? 優しく教えてあげたよ。
『龍牙さんの恋
完全に終わってますよ』って」
「……え?」
「『龍牙さんの好きな人は
虎くんの彼女さんで。
龍牙さんが入る隙なんて
1ミリもないですよ』って
教えてあげたの」
……十環先輩。
あなたは、悪魔ですか?
龍兄は半年以上も
清香さんのことが好きで。
好きすぎて
自分から話しかけられなかったんですよ。
だから私も
龍兄が傷つかないように
言葉を選んで、清香さんのことを
伝えなきゃって思ったのに。
「桃ちゃん、もう大丈夫だよね?」
「……はい」
大丈夫じゃないし。
生きる気力をなくして
屍みたいに地面に転がっている
この龍兄を、
私が何とかしなきゃいけないし……
私は十環先輩との通話を終わらせて
虎兄にそうっと声をかけた。