白雪姫に極甘な毒リンゴを 短編集
「一颯っち、
そんなオドオドした顔をしないで。
今は殴ったりなんてしてないよ。
壁を殴るのなんて
中学で卒業したから安心して」
「恋都さんって
中学の時に荒れてたんですか?」
「想像できない?
まぁ、昔の俺を知らない人からは
良く言われるけど。
でもさ、こんな家に育ったら
ひねくれない方がおかしいと思うよ。
高校卒業まで
朝5時起きで武道の稽古させられて。
店の手伝いしないと
小遣いなんてもらえなくて。
俺が中1でロリータ服を
作り出したのだって。
初めは、父さんや母さんに
恥をかかせたいって
思いからだったしね」
「恥……ですか?」
「そう。
だってさ
道場で武道を教えてる父さんと。
呉服屋を経営してる母さん。
その息子が
ロリータなんて男らしくないものに
はまったら、
近所から変な目で見られるでしょ?
親のことが大嫌いすぎてさ。
父さんたちが
世間から外れてる俺のせいで
苦しめばいいって、
中学の時は真剣に思っていたからね」
「確かに……
今の穏やかな恋都さんからは
想像できないです」