白雪姫に極甘な毒リンゴを 短編集
わかりやすいくらい
暗い顔をしていた俺。
濁った心を晴らすような
ピョンピョン飛び跳ねた声が
俺の耳に届いた。
「一颯っち!
俺ね
いいことを思いついちゃったんだけど!」
「え?」
「刺繍してあげれば?
りっちゃんに着て欲しいベストに」
「刺繍?」
「そう。
一颯とりっちゃんだけの
マークみたいなものを考えてさ。
胸元にポンって。
ベストを着るか着ないかは
りっちゃんにお任せしたとしても。
一颯っちが高校の時に着ていたベストに
刺繍してりっちゃんに
プレゼントしたらさ。
喜んでくれると思うけどな」
「そうかなぁ……」
「そうだよ。
じゃあ今から、お兄さんが
服飾の先輩として
デザインを一緒に考えてあげる」
「……いいです。
俺だけで、考えたいから」
「もう一颯っち。
りっちゃんのことになると
かわいい顔するんだから」
そう言って恋都さんは
スケッチブックとペンを
俺に渡してくれた。
六花と俺だけのマークかぁ。
刺繍を見せたら
六花がとびきりの笑顔を
見せてくれるような。
そんな素敵なマークを考えたい。