白雪姫に極甘な毒リンゴを 短編集

「ひゃ!! 
 い……いっくん!!」


 ど……どうして?

 なんで私……
 いっくんのベッドで寝ているの?


 私はあわてて
 ベッドから体を起こした。


 その時
 不愛想ないっくんの声が。


「六花さ、
 なんで玄関なんかで寝てたんだよ」


「だっていっくんが……
 帰ってこないから……」


 いっくんの目が吊り上がってる。


 私がいっくんのベストを着て
 高校に行かないって言ったこと
 まだ怒ってるんだ。


 ちゃんと言わなきゃ……

 いっくんが帰ってきたら
 伝えようって思っていたこと……
 素直に伝えなきゃ……



 そう思った瞬間に
 込み上げてきた切なさ。

 
 自分の思いを伝え終わるまでは
 絶対に泣かないって
 決めていたはずなのに。

 涙が勝手に、瞳にたまっていく。


 私は必死で涙をこらえ、つぶやいた。
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