白雪姫に極甘な毒リンゴを 短編集

「虎兄の愛情表現は
 わかりにくいんだよ。

 私が十環先輩のことで
 落ち込んでいた時だって、
 目を吊り上げながら
 優しいこと言ってきたりしたじゃん。

 高校を卒業したら
 朝練はやらなくてよくなるのに。

 私が卒業するまで
 朝練に付き合ってくれるって
 言ってくれた時だって
 言葉を吐き捨てるように言ってたけど。

 笑顔で言ってくれていたら
 『なんて優しいお兄ちゃん』って
 なってたからね。

 ま、私も虎兄と同じで
 自分の気持ちを
 ストレートに表現するのが
 恥ずかしいタイプだから。
 気持ちはわかるけどさ。

 清香さんはそういうタイプじゃないから
 好きなら好きって言ってあげなきゃ
 わからないと思うよ」



「……俺でいいと思う?」


「なにが?」


「だからさ……
 清香の隣に……いる男が……」


「私は、虎兄しかいないと思うよ。

 今よりもっと
 清香さんを笑顔にできる男は。

 でもまあ、虎兄も
 ちょっとは変わらないと
 ダメだと思うけどね」


「桃さ、今から店番変わって」


「いいけど」


「おれちょっと、出てくるから」


 俺は財布とスマホをポケットに入れ
 お店の外に駆けだした。


         ☆つづく☆


 次回が
 虎兄の不器用な恋、結末のお話しです。

 虎兄、頑張れ!


 あ……
 龍兄の存在、また忘れていた。


 谷底に突き落とされたくらい
 落ち込んでいる龍兄が
 今どこで何をしているのかは
 虎兄の恋が完結した後で。

 
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