白雪姫に極甘な毒リンゴを 短編集
カーテンにくるまり
再び泣きだした私に気付いたのか
虎ちゃんがカーテンの上から
優しく頭を撫でてくれた。
「清香にはこれからも
俺の隣にいて欲しい」
いつも堂々としている虎ちゃんとは
思えないくらい、か細い声。
ずっと言われたかった
甘い言葉のはずなのに。
素直にうなずくことができない。
「もう俺のこと、嫌いになった?」
「嫌いじゃ……ない。
でも……今までみたいに
虎ちゃんの隣で笑えない……」
「そっか。
そうだよな。
俺、お前に
キツイ態度とってたもんな。
そのうえ、清香の笑顔まで奪ってさ」
虎ちゃんはしばらく黙って
そして
今までで一番優しい声を発した。
「もう、お前の前には現れないからさ。
安心して」
その言葉のあと
きつく抱きしめてくれていた
虎ちゃんの腕がほどけ
大好きな人の足音が
どんどん遠のいていった。