白雪姫に極甘な毒リンゴを 短編集
桃華side
☆桃華side☆
自分の部屋で漫画を読んでいると
ドアをノックする音が聞こえてきた。
「誰?」
「俺……だけど……
ちょっといいか?」
虎兄かぁ。
気になっていたんだよね。
虎兄が店を飛び出した後
ちゃんと清香さんと
寄りを戻せたのかどうか。
「別に、いいけど」
そっけない私の声を聞いて
虎兄が部屋に入ってきた。
虎兄が私の部屋に来ることなんて
滅多にない。
だから絶対に
私に伝えたいことがあって
来たんだろうって思うのに
ドアの前で立ち尽くしたまま
一向に口を開く気配がない。
「何?
虎兄は何しに来たわけ?」
「別に……
特に用とかはないけど……」
明らかに私に伝えたいことがあるって
バレバレなのに
ムスッとした顔でうつむいている。
は~。もう。
言いたいことがあるなら
スパッと言いなさいよ。
そう思いつつ
清香さんのこととなると
弱っちくなっちゃう虎兄が
かわいく見えてきて、
ちょっと意地悪でも言いたい
気持ちになった。