白雪姫に極甘な毒リンゴを 短編集

 そう思って
 ペダルを漕ごうとしたとき
 視界の中で、何かが動いた。


 ん? 何?


 自転車を降り
 目を凝らしてみると
 人の足のようなものが見える。


 は? 
 人じゃないよね?


 ちょっとビビりつつ
 倉庫の横に回り込むと
 倉庫と隣の店の狭い通路に
 人が倒れていた。


「と……十環先輩?」


 なんで、こんなところに倒れてる?

 まさか……
 まだ捕まっていない強盗犯にやられた?


 体中の血液が
 一気に冷え固まったかのように
 恐ろしくて寒気が襲ってきた。


 「十環先輩、大丈夫ですか?」


 暗くて
 傷があるかとかはわからないけど。
 息はしているし、脈もある。

 とりあえず、生きてる。


 でも
 呼んでも目を開ける気配はない。



 どうしよう。
 こんな真夜中に
 病院なんてやってないし。
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