白雪姫に極甘な毒リンゴを 短編集

「桃華ちゃんは
 十環くんは私たちの
 本当の子供じゃないことは
 知っているかしら?」


「はい。十環先輩から聞きました」


「そうなのね。
 十環くんが私たちの家に来たのは
 あの子が小1の時。

 小学校の十環くんは
 誰にでも笑顔で
 私たちの言うことも聞いてくれる
 優等生みたいな子だったの。

 でもね、中学に入ってから
 急に十環くんが
 私たち家族を拒絶するようになって。

 私たちも
 どう十環くんに接していいか
 わからなくなって。

 そんな時に、龍牙くんが
 この家に頭を下げに来てくれたの。

『あいつのことを、俺に任せて欲しい。
 十環をTODOMEKIに入れることを
 許可してほしい』って。
 
 十環くんとのすれ違いが
 続いていた頃は、
 まさかこんな風に
 十環くんが私たちに心を開いてくる日が
 来るなんて、思えなかったわ。

 今があるのは、間違いなく
 龍牙くんのおかげなのよ」


 龍牙くんの……おかげか……


 その言葉が
 胸に引っかかってチクチク痛みだした。

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