触れたい、できない
「もー…初日から散々だったよ…」
私はトボトホとひとり玄関に向かい、靴を取り出していた。
…自分のコンプレックスをつきつけられるわ、仕事は多いわ、1人で帰らなきゃ行けないわ…
なにこれ?想像してた高校ライフと違うんですけど。
_私は思わずため息をこぼす。
いやまぁ友達がいっぱいできるとは思ってなかったけどさぁ…
結局、お昼や10分休憩の合間に声をかけてみても恐がられて女ともだちは未だゼロ。
私は廊下にある大きな鏡を通して、自分の姿を見た。
……眉で綺麗に切りそろえた前髪。
腰まで伸ばした、茶髪のロングストレート。
くっきりした二重の大きな瞳。
そんでもって、149センチというこの低身長。
そんな怖がられる見た目ではないと思ってるんだけどな…
……いや、逆にそれがダメなのか?このゆるっとした雰囲気で中身がこれだから?
だから怖がられるのか?!
「や、そんなこといったって、顔は変えられないし、髪も切りたくないもんな…」
私は肩にかかる自分の髪を触った。
ある日から伸ばし続けてきた、この長い髪。
_伸ばさなきゃと決めた髪。
「…まっ切るくらいならこのままでいっか」
うん、そうだ!と頷いた私は踵をかえし、玄関へ向かった。
「…お前鏡の前で何ブツブツ言ってんだ?紺」
すると突然、横から聞こえた声。