触れたい、できない
「_そういえば…今日は悪かったな」
駅に着き電車に乗りこんだ瞬間、思い出したようにつぶやく蓮。
「ん?なんのこと?」
シートを確保した私は、満足気に返す。
そして向かいの席をポンポンっと叩いた。
「…委員決めの時、手上げてやれなくて」
蓮はバックを下ろして向かいに座り、動き出す電車に揺られながら、肘をついた。
_ゴトン…ゴトン…
「えぇ、そんなこと気にしてたの?」
万屋が無理やり委員をやらされたの、やっぱり気づいてたんだ。
手、あげようとしてくれてたもんね?
「もー万屋に気を使ったりなんかしちゃって!相変わらず優しいんだからっ」
私はバシッと蓮の膝を叩く。
すると蓮は顔をしかめ、
「…いや、中学までお前のおもりは俺がしてやってたのになーと」
と言った。
…え、今
「おもりって言った?」
いやバンバン働いてましたけど?!そりゃあ、蓮ほど仕事は早くなかったけど!
部活の両立も、完璧には出来ていなかったけども!
私は手を引っ込め、蓮をいつものようにキッと睨んだ。
って、あれ?
_いつもみたいに鼻で笑ってこない