触れたい、できない
「_じゃ、また明日な」
「送ってくれてありがとね!おやすみー」
私を駅から家まで送ってくれると、早々に歩き出す蓮。
結局今日は、中学の時のように家まで送ってもらってしまった。
…だって道わかんなかったんだもん、しょうがないじゃん。
「あっ、待って蓮!」
私は蓮の後ろ姿を見て、言おうと思っていたことを言い忘れたのに気づき、蓮を引き止めた。
と同時に、すうっと大きく息を吸い込む。
「私、万屋とちゃんと上手くやれそうだから!さっきみたいに、心配してくれなくて良いんだからね?」
その声に、蓮はふと振り向いた。
…多分さっきは、初っ端からケンカしてた私と万屋のことを心配してくれてたんだよね?
「これから中学の時みたいに蓮に迷惑かけないよう、がんばるからね!見てなさいよ?」
私はそう言い切ると、ニコッと笑って蓮に手を振った。
…よし、言いたいことは全部言ったぞ!
しかし一方で、蓮は頭をかいてはあっとため息をついた。
「…や、迷惑かけてくれていーんだっつの」
こちらを見ながら、何かをつぶやいている蓮。
でも私たちの距離は、決して近い訳ではなくて。
「えー?なんてー?!」
難聴気味の私には、全く聞こえなかった。